半世紀以上に渡り唱えられてきた「脂肪、とくに飽和脂肪はほとんどの人にとって不健康」とする説に疑問符が投げかけられた。ノルウェー・ベルゲン大学の研究。
今回、加工度の低い炭水化物や脂肪による健康効果は、非常に似ていることがわかったという。
この研究で行われた無作為比較試験では、腹部肥満を持つ男性38人を対象にして、高炭水化物食(脂質エネルギー比30%・糖質エネルギー比53%) または高脂肪食(脂質エネルギー比73%・糖質エネルギー比10%。脂肪の半分は飽和脂肪)を12週間摂ってもらった。そして心血管疾患の多くの鍵となる危険因子とともに、腹部・肝臓・心臓の脂肪量を正確に測定した。
「総脂肪摂取量および飽和脂肪摂取量が非常に多くても、推定される心血管疾患のリスクは上昇しませんでした」と研究者であり心臓専門医のニガルド医師は話す。「高度の高脂肪食を摂っていた参加者にも、たとえば異所性脂肪(肝臓や骨格筋への脂肪蓄積)、血圧、血中脂質、インスリン、血糖といった複数の重要な心臓代謝危険因子においてかなりの改善がみられました」
<高品質の食品は、より健康的>
上記の両群は、エネルギー、たんぱく質、高度不飽和脂肪酸の摂取量や食品のタイプは同様にし、添加する砂糖の量は最低限に抑えた。
「私たちは、新鮮で加工度が低く栄養価の高い食品に富み、健康的な食生活における、総脂肪と飽和脂肪の健康への影響を見ました。この食生活には、小麦粉を主成分とした製品の代わりに、たっぷりの野菜と米が用いられています」と、共著者のベウム氏。「脂肪の供給源も、加工度の低いものです。おもにバターやクリーム、低温圧搾された油などです」
なお、今回の総エネルギー摂取量は正常範囲内としている。
共著者のボルゲ氏は「私たちの発見は、健康的な食生活の最重要の原則が脂肪または炭水化物の量でなく、食品の質であることを示しています」としている。
<飽和脂肪は「善玉コレステロール」を増やす>
飽和脂肪は、血液中で「悪玉コレステロール」を増やすことで心血管疾患を促進すると考えられてきた。しかし、今回の研究は他の大部分の類似の研究と比較して、LDLコレステロールの有意な増加を見出すことはなかった。むしろ善玉コレステロールは、高度な高脂肪食においてのみ増加した。
「脂肪の質が良好であり、かつ総エネルギー摂取量がさほど高くない限り、ほとんどの健康的な人にとって飽和脂肪の摂取量が多くても問題ないであろうことを、これらの結果は示しています。それは、健康的とさえいえるかもしれません」ニガルド医師は述べている。
共著者のダンケル准教授は、「今度の研究で、どういった人々が飽和脂肪の摂取量を制限する必要があるのかについて調べなければなりません。しかし、高品質の脂肪を食べることによって推定される健康リスクは、非常に誇張されてきました。公衆衛生上、小麦加工製品や高度に加工された脂肪、砂糖を添加した食品を減らすように勧めることが、より重要であるかもしれません」としている。